現代ミステリーの草分け的存在の綾辻行人さん。
綾辻さんが書かれた館シリーズの『びっくり館の殺人』を読みましたので感想を書かせてもらいます。
本来子どもが楽しめるように書かれたミステリー作品ということもあってそこまで残虐すぎる描写がなくさっぱりした作品に感じました。
(とはいえ、古屋敷おじいちゃんがリリカを使って腹話術劇を披露するシーンや、梨里香と俊生の出自の秘密など子どもには重井の強い描写はありましたが…)
この物語の良いところは話のオチを読者が解釈できるようになっているところだと思います。
物語の終盤、主人公によって一応のオチが語られますが、それはあくまで主人公の解釈であり、本当のところどうだったかは読者で想像する余地があり面白いと感じました。
最後のシーン、闇色のスールを着て圧倒的強者感を醸し出す俊生にビビってしまいました。この後三知也はどうなってしまうんだろう…俊生とあおいは今どういう関係なんだろうということが気になってしまいます…
姉である梨里香の26回目の誕生日に会えて真っ黒な服で登場する俊生とあおい…あおいは昔と変わらない口調で三知也に話しかけてくれますが、中身は当時のまま純粋なのでしょうか。
十年前のあの日、俊生を警察から守ることは本当に正しかったのか…。
先に被害を受けていた者が反撃した時、それを正当化するべきか否かはどう判断するのか…。
このようなことを考えることは子どもにとって想像力を膨らませたり、善悪について考える良い機会になるだろうと思いました。
一方私の方は、終始気味の悪い館の住人と所々に差し込まれる絶妙に不気味なイラストに終始ドギマギしていました。
綾辻さんの他の作品を読んできた人からしたらマイルドすぎて物足りない気持ちになるかもしれませんが、このくらい余白があると自分の想像(あるいは妄想)を楽しめていいものだなと思いました。